キャリア研究会:女性のためのネットワーク作り

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自らを少しでも高めたい、仕事と家庭を両立したい、そんな女性たちにネットワーク作りの場を。キャリア研究会

活動履歴

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開催報告

開催日 2021年5月13日(木)19:00~21:00
場 所Zoomによるオンラインセミナー
会 費正会員1,000円 準会員2,000円
テーマ知られざる水害被災
講 師金藤純子
株式会社EnPal 代表取締役
防災士、災害備蓄管理士
参加者 21名(欠席2名)

 

セミナーの模様

今回のオンラインセミナーは、株式会社EnPal 代表取締役 金藤純子(かねとう じゅんこ)さんに「知られざる水害被災」についてお話いただきました。

金藤さんは、2018年7月に発生した西日本豪雨で被災され、倉敷市真備町の実家と自宅2軒が全壊。避難先のまび記念病院も2時間後に浸水し、翌日自衛隊に救助されるまでの間、その状況を写真や動画として記録。ニュースでも取り上げられました。

この被災をきっかけにボランティア活動を開始。2020年6月に株式会社EnPalを立ち上げられました。
自らも、防災士、災害備蓄管理士の資格を持ち、地域社会と調和し持続的な発展を目指す法人、個人とともに、被災地から見えるまちづくりの根本的な課題、防災啓蒙活動に取り組んでいらっしゃいます。

「日本でも天変地異が多くいつ何が起こるかわからない。その時のために危機管理という意味合いでもお話を伺いたい」という野木会長の想いから、今回のセミナーが実現しました。



水害被災すると何が起こるか

2018年7月7日に発生した西日本豪雨。まず初めに、その1週間後に金藤さんが取材を受けた際のニュース映像をご紹介いただきました。
発災から2日目、2メートル程ある濁った水の中、自衛隊のボートに乗って救助される様子を金藤さんが動画撮影。水没し変わり果てた町の様子や、天井の一部しか見えない自身の車、目線の高さにある信号機がそこには映っていました。

真備町の被害状況は、死亡者51名(災害関連死を除く)、被災家屋数5600棟(全壊4632棟、半壊822棟)。そのうち、82%にあたる42人が自ら避難できない要援護者でした。
車椅子で2階に上がれない、携帯電話やスマートフォンを持っていない、近所付き合いがないなど、さまざまな理由で逃げ遅れた方々です。


災害弱者でなくとも「逃げられない理由」はあると言います。
それは「決壊した場所がわからない」「水が溢れていることに見えるまで気づかない」「ペットがいると避難をためらってしまう」「田舎は高い建物がない」「停電し通信ができない」などです。



そして、被災後にはこんなことが起こるということも教えてくださいました。
  • 身体的な苦痛
    数カ月も続く頭痛、下痢などの体調不良/糞尿や食品が腐った匂いの中での片付け/汚泥が乾いた後の粉塵など
  • 失って辛いもの、後悔
    後になって、無いことに気が付く家族の思い出
    →まず位牌や貴重品を確保。汚泥の掻き出しを急ぐ。仕方がないこととはいえ、片付けはボランティアの皆さんにお手伝いいただき、家族の記録(ビデオや写真など)が処分されてしまった。
    ※ハザードマップを見てどのくらい浸水するかを確認し、失いたくないものは高いところに移動する、データ化しクラウド保管する、などが大切!
  • 家族、親族の違和感、戻るのか・戻らないのかの選択
    町に戻るか?家をどうするか?今後のことを親族会議するも、意見が分かれる。
    子)また被災する可能性があるから戻らない方がいい。
    親)死んでもいいから戻りたい。
被災をすることがどういうことなのかを痛感したと金藤さん。
「これまで阪神・淡路大震災や、東日本大震災も経験しているのに、孤独死や故郷に戻りたいという言葉の本当の意味が理解できていなかった。今になってやっとわかるようになった。」と声を詰まらせました。



増加する都市の水害、水没

災害には「突発型ハザード」と「進行型ハザード」があり、集中豪雨は進行型ハザードにあたります。これはハザードマップを確認し、二日前から準備をすれば、逃げられる災害とのこと。
しかし、都市型の水害はマンホールから水が噴き出すような内水氾濫が起き、足を取られてマンホールに落ちて亡くなるなどの危険があります。
原因は地表がコンクリートで覆われているため雨水を地面が吸収できず、直接川や下水道管に流れ込んで処理能力を超えてしまうことにあるそうです。
そして今、一番怖いのは全国に約80カ所ある地下街だと言います。
「地下街は地震には強いが、津波や大雨の時は大変危険だということを覚えておいてください」と金藤さんは強くおっしゃいました。

また、地名はそこが昔どのような場所だったかを表しています。
実は金藤さんのご実家の側には、明治26年に起こった大洪水の供養塔があることを被災後に知ったそうです。このことは学校などでも教えられなかったとのこと。
沼、河、池など、さんずいの付く地名はその昔、沼地や田んぼだったりするように、地元で小さい頃から相地学や防災について学ぶことは大切なのではないかという気づきも、金藤さんが起業した理由のひとつだそうです。



都市で働き、実家は地方

地方から三大工業地帯に人口移動が最も多かったのは1961年。 その後も景気が悪くなると地方から都市圏へ人口移動が起こるようです。 首都圏における移動者の居住地を見ると、70年代には都心に近く、80年代は郊外へ、現在はまた都心の湾岸エリアに再都市化しているとのこと。 このことから、郊外は高齢化が進み、単身高齢者が急増。災害発生時に逃げ遅れる人が増えるという懸念があるようです。



コロナ禍の帰宅困難と在宅避難

避難と感染防止を両立が困難な中、一体どこへ逃げれば良いのでしょうか。
真備町の例を見てみると、ハザードマップ通りに水没していることがわかります。
ということは、首都圏においても同じこと。
いざ災害が起きた時に、3密となる避難所に逃げることが難しい現在、分散避難や車中泊も想定し、独自の逃げ場所「マイ避難先」を家族で、できれば3カ所決めておくと良いそうです。公園や道の駅などの他、親戚や友人宅、ホテルや旅館などもその候補先です。

この他にも考えておくべきことがあります。

  • 何を持っていくのか(スマホ充電器、携帯トイレ、食料、貴重品、薬、住所録が無くて困ったという方もいます など)
  • 要援護者、車椅子の方、乳幼児、ペットは大丈夫か
    (自閉症やシックハウス症候群で避難所に入れない方もいらっしゃるので、併せて考えることが大切)
  • 近所のコミュニティが希薄になっているが、声掛けはとても重要
  • マイタイムラインを作り、いつどうなったらどこへ逃げるかなども用意


マンションなど自宅避難をする場合に気を付けなければならないことがこちらです。

  • 水や食料などの物資は指定避難所にもらいに行かなければならない
  • トイレの使用、排水は絶対にしてはいけない。必ず災害用トイレ(携帯トイレ)を使うこと
    (排水管が破損し、地下にある汚水槽があふれる危険がある)


最後に、「水が引いたらすぐに行う10のこと」という金藤さんが作られた資料をご紹介いただきました。 こちらは、キャリア研究会のフェイスブック(メンバ限定)に共有いただきましたので、ご覧ください。

それから、参加者のリクエストでオススメの本もご紹介いただきました。
●日本水没 河田惠昭(よしあき)関西大学特任教授/朝日新書
●うんちの行方 神舘和典 西川清史/新潮新書



セミナーを終えて

セミナー後、金藤さんは参加者の質問に一つひとつ丁寧にお答えくださいました。
集中豪雨や台風、洪水は「逃げられる災害」なので逃げて欲しい、その方法を知って欲しいという強い想いが感じられました。
自身が被災し、起業をするに至った「西日本豪雨」という災害が、いかに過酷なものだったか。常ににこやかな金藤さんが一瞬声を詰まらせたのは、家族のお話でした。

もしかしたら、今年もどこかで災害が発生し、自分が、家族が被災するかもしれません。
セミナーへ参加された方のほとんどが、その場でハザードマップを確認していました。
これをお読みになったあなたも、一度ハザードマップを確認してみてはいかがでしょう?
インターネットでも検索が可能です。



次回もオンラインセミナーを予定しておりますので、是非お気軽にご参加ください。



受講者の声

   
  • 本当につらいお気持ちを思い出すことになるお話を聞かせていただいて、ありがとうございました。報道だけではわからないリアルなお話を伺えて、自分の具体的な防災を考える貴重な機会となりました。これだけ地域を問わず自然災害が起きる時代なので、他の人にも伝えたいと思います。
  • 災害のことは私も日頃忘れがちで、お話を伺いハザードマップを確認しました。自分だけではなく、家族のためにも大切なことだと再認識しました。また地縁や血縁以外の緩い繋がりが新しいコミュニティとして必要とおっしゃっていたことが印象に残りました。
  • コロナも含め、今何が起きてもおかしくないという状況で生きていることを改めて考えさせられました。首都圏に住んでいますが、地震のことは考えますが、水害についてはなかなか意識が行かないというのがあると思いました。(職場や学校でも、地震・火事の訓練はありますが、水害についての訓練はありません) 水害について子供に教育すること、地域で起きたことを伝承することの大切さを感じました。
  • 防災についての意識が改めて高まりました。ご両親の「死んでも戻りたい」というお話には、もらい泣きしてしまいました。母の事もですが、近隣の高齢者の避難について考えておくことの大切さを感じました。

(アンケートより抜粋)

※講師の方の所属及び役職は、開催当時のものです。(敬称略)

 

今後の開催予定は、こちらから