キャリア研究会:女性のためのネットワーク作り

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自らを少しでも高めたい、仕事と家庭を両立したい、そんな女性たちにネットワーク作りの場を。キャリア研究会

活動履歴

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開催報告

開催日 2020年10月21日(水)19:00~21:00
場 所Zoomによるオンラインセミナー
会 費正会員1,000円 準会員2,000円
テーマ 私の未来(大学)への道を拓いてくれた出会いと函館ライフ
講 師 大場みち子
公立はこだて未来大学 情報アーキテクチャ学科 教授
参加者 24名(欠席1名)

 

セミナーの模様

キャリア研究会のメンバーでもある大場みち子さんにお話を伺いました。

大場さんは、まだ男女格差が大きい時代に民間企業に入社され、研究所からソフトウェアの設計部門に異動。途中、大学院博士後期課程に社会人入学して博士号を取得、大学教員への転職というキャリアを歩んでこられました。
現在は、北海道函館市にある公立はこだて未来大学で研究・教育に邁進。先日、日本学術会議の会員に任命されました。

今回の講演では、キャリア形成において大場さんの未来、そして未来大学への道を拓いてくれた3人の恩人との出会いやエピソードについてお話いただきました。
そして最後に、函館でのワクワク感が絶えない仕事や学生たちとの交流、観光地そしてイカの街、函館での魅力的な日常もご紹介いただきました。


研究とは何かを教えてくれた将来を決定づけた上長A氏との出会い

1982年、株式会社日立製作所 システム開発研究所に入社された大場さん。 当時、コンピュータの知識がほとんどなかったという大場さんは、入社早々「落ちこぼれ」のレッテルを貼られたといいます。周囲からは「2、3年したら結婚退職するだろう」そんな風に思われていたのだとか。
そんな中、大場さんの将来を決定づけた上長A氏が現れます。
留学から帰任した上長A氏から厳しい指導を受け、大場さんの状況は一変。
研究のアプローチ、特許、研究報告、社外発表、論文執筆を教えてくれたA氏はやることなすこと全てが早く、特に論文チェックの早さは凄まじかったようです。
「こんな修正30分もあればできるやろ」
時間をかけて書き上げた論文はあっという間に戻され、当時は修正に1週間かかったといいます。1日2日かけて作った特許書類に大きな×(バツ)を付けられたことも。この時は、本当に泣けたと大場さん。
それでも、100回以上のやり取りがあった論文を「ラブレター交換」と呼ぶなど、厳しい中にもユーモアがあり、思わずクスリと笑ってしまうエピソードも紹介してくださいました。

結果、研究所での7年半に、ジャーナル論文3件を投稿し、2件が採録されるという成果を上げられました。ジャーナル論文が2~3本採録されれば、博士号の取得条件のうち半分がクリアできると言われており、上長A氏からの期待は高かったようです。
ところが、その夢が遠ざかる出来事が起こります。



開発とは、マネジメントとは何かを教えてくれた上長B氏との出会い

夢だった博士号が目前で手のひらからこぼれ落ちたのは1990年。
大場さんはソフトウェアの設計部門に異動、首都圏の研究所から関西に転勤されました。
研究者から設計者へとなったのです。
異動から半年後、ソフトウェア開発プロジェクトの経験がないまま、メンバー10数名を束ねるプロジェクトマネージャに抜擢。そのプロジェクトは、日本全国に複数の拠点を持つ巨大プロジェクトの中のひとつでした。進捗の遅れがどんどん拡大し、毎日4時間残業、休日出勤が当たり前の中、体力的にも限界を感じつつあった頃、プロジェクトメンバーの「主婦の前に主任でしょう?」という言葉に、思わず涙ぐんだこともあったといいます。
そこに救世主の如く現れたのが設計部長のB氏です。B氏はプロジェクト管理のノウハウを一から叩き込んでくれたといいます。
「メンバーの8割以上が付いて来なければマネージャ失格。そうじゃなければ頑張る姿を見せればついてくる」。この言葉に「気休めかもしれないが、非常に救われた」と大場さん。
「僕は設計部長じゃなくて接待部長だから」が口癖のB氏は、大場さんをよく接待の場(飲み会の場)に呼んでくれ、これが良いガス抜きになったそうです。
「“仕事”は遅れても“乾杯”には遅れるな」
この教えは今でも守っていると大場さん。お酒が飲めて本当に良かったと笑いました。



上長Aとの再会、そして教員への道

阪神大震災の直後、大阪から横浜に異動となった大場さんは、販売促進部門で相変わらず忙しい日々を送っていました。
そんな中、上長A氏と再会。A氏は大阪大学大学院の教授となっており、博士号を取得しないかとの誘いを受けました。夢だとあきらめていた学位取得への道を、再び歩み出すこととなったのです。
1999年、大阪大学大学院博士後期課程に社会人入学され、仕事をしながら、2年での学位取得を目指す(通常は3年)、新たに2件のジャーナル論文の採録、海外での論文発表2件、そして博士論文執筆という目標を掲げます。
平日は仕事、休日に論文執筆という非常に苦しい日々の連続だったといいます。
惜しくも2年での学位取得は実現しませんでしたが、2001年、4月の1ヶ月間を論文執筆にあて、9月に博士(工学)を取得されました。
「とにかく嬉しかった。あの苦しい日々から脱出できる、二足の草鞋から解放されると思いました。」
大場さんの言葉から、その辛さ、苦しみがひしひしと伝わってきました。
「知識を利用した企業情報システムの構築と統合に関する研究」
これが博士論文のタイトル、大場さんの20年にわたるキャリアの集大成です。



実践型教育の真髄を指導してくれた女性研究者C氏

三人目の恩人は、70代で現役女性研究者C氏。
情報処理学会のある研究会での出会いが、公立はこだて未来大学の教授という道へとつながります。
C氏に誘われ、経済産業省FD(Faculty Development)プログラムへ参加。東京工科大学でシステム開発演習の非常勤講師となりました。
キャリア研究会の野木会長との出会いはこの頃だったようです。
C氏と、教科書の共同執筆、実践型ICT教育普及活動、特集論文でのゲストエディタを体験するなど、教育・研究活動を共にしながら指導を受けられたとのことです。
情報システムや実践型のICT教育とは何かの真髄を体験的に学んだことで、大学教員へ一歩ずつ近づいていることを実感された大場さんは、2010年4月、公立はこだて未来大学の教授として採用されました。情報処理学会フェローでもある大場さんですが、推薦書を書いてくださったのもC氏のようです。
「最も尊敬する70代の現役女性研究者C氏に一歩でも近づきたいと日々努力を重ねている。」と大場さん。
今もなお目標を掲げ、日々努力を惜しまない姿勢は、参加者の皆さんに響いたようです。



社会をデザインする大学への転属とワクワクなはこだてライフ

日立製作所から、公立はこだて未来大学に転属となった大場さんは、日々ワクワクしながら函館ライフを送られています。
はこだて未来大学は2000年に開学した、学生数1,200名、教員70名、職員50名のコンパクトな大学で、情報工学+αの学びを提供。情報デザインコースがあり認知心理学やコミュニケーション、デザインが学べる点が非常に特徴的です。
スローガンは「Open Space, Open Mind」。全面ガラス張りの校舎で、フロアもオープンスペースとなっており、無線LANや電源も各所に設けられ、教員・学生・職員の距離も近くみんな仲が良いとのことです。残念ながら今年は開催できませんが、お花見やクリスマス、誕生会などを開催しているそうです。

 

 

函館ってこんなところ!

  • コンパクトシティ函館:主要な場所まで30分程度で行ける!
  • 夏涼しい:東京との気温差10℃
  • 雪が少ない:函館は北海道の南国といわれている(積雪10~20cm)
  • 函館街歩き:建物が素敵、函館の銭湯は全て温泉
  • 異国情緒あふれる西部地区:元町の聖ハリストス、聖ヨハネ教会など
  • 夜景:函館山から見える夜景と城岱牧場からの裏夜景
  • 四季折々の風景:春の五稜郭公園、夏の港まつり(いか踊り、花火)、秋の紅葉、冬のクリスマスファンタジー)
  • 安くて美味しい食べ物:活いか、つぶ貝、うに、あさりのすき焼きなど

 

みなさんに贈る言葉
最後に、大場さんから二つの言葉が贈られました。

「量はあるとき質に転じる」
「未来は自分の中にある」

いつも明るくパワフルで、いつも元気を分けてくださる大場さん。
その土台には血のにじむような努力や時間が積み重なっていることを知りました。
未来を拓いてくれた3人との出会い。このチャンスを活かせたのは、大場さんご本人に他なりません。

「いつか“出会えてよかった”と言ってもらえるような人になりたい」
そんな言葉で締めくくった大場さんですが、どうやらその目標も既にクリアされていらっしゃるようです。



セミナー終了後は、飲み物を片手に1時間程、懇親会を開催しました。
近々函館に旅行予定という方は、大場さんにグルメ情報を伺ったり、久しぶりに参加いただいた方からも様々な近況報告をいただいたりしました。
「オンラインだから参加できる」という声も多いようです。
次回もオンラインセミナーを予定しておりますので、是非お気軽にご参加ください。



受講者の声

   
  • 大場先生とは研究会で出会いましたが、これまでの経歴をここまで詳しく存じておりませんでした。今日は貴重なお話をありがとうございました。就職当時のご苦労からここまで飛躍された人生を知り、志と努力があれば、こうして道を進めることができるんだと思いました。そして人にはそれぞれターニングポイントがある、そこで自身がどう選択していくのかも大切だとお話から感じました。また函館に行きたいと思います。大場先生ともたくさん話したいです。これからのご活躍も応援しています。未来は自分の中にある、本当にその通りですね。
  • 社会人になってから人生を変える人物に会える(それも3人も)なんて、とても羨ましく伺っておりました。ただ多くの方の上司でもあったと思うので、大場先生の人柄もあってこのような影響を与えてもらえたのだとも思いました。 何より大場先生の努力があっての出会いが活かされたのですね。 私もそろそろほかの方に何か与えるようにならなければならないと思っていますが、まだまだ努力が必要とも思いました。 また明日から頑張ろうと思います。ありがとうございました。
  • 人脈を大切にされながら、自分の未来を切り開いていく大場先生の話を聞くことができて本当にいい気づきを得ることができました。 チャーミングな姿もとっても素敵です!

(アンケートより抜粋)

※講師の方の所属及び役職は、開催当時のものです。(敬称略)

 

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