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開催報告
開催日 | 2019年1月20日(日)11:00~14:45 |
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場 所 | 日立目白クラブ |
会 費 | \6,000 |
内 容 | 2018年の活動報告、講演会、パーティ、「キャリア研究会の歌」プレ発表 |
テーマ | 平成日本病の処方箋-新しい時代への序章- |
講 師 | 中川晋一 一般社団法人情報通信医学研究所 代表理事・所長、産業医、医学博士(京都大学)、学術博士(東京工業大学) |
参加者 | 43名 |
平成最後の新年会
建物見学と活動報告
キャリア研究会恒例の新年会が、今年も日立目白クラブで開催されました。
まず、初めて訪れた参加者を中心に、築90年、アール・デコ様式の建物探訪を野木会長のガイドで行いました。
次に、野木会長による2018年の活動報告。
『営業女子の会』『第三の人生を考える』という2つの分科会も活動を始め、それぞれのテーマに関心を持つメンバーが集まって語り合いました。その他、非公式な飲み会、食事会などがいろいろな形で開かれています。
今後やりたいこととしては、キャリア研究会のブランド化、ロゴ作成、会員のデータベース化があります。どんな人が集まっているのか“見える化”するために、会員のみなさんには再登録をお願いすることを検討中です。ご協力のほど、よろしくお願いいたします。
2019年のキャリア研究会は6回の定例研究会と国内研修旅行、大人の社会見学を予定しています。内容等が決まり次第、ホームページに掲載していきますので、ふるってご参加ください。当会のボランティア幹事も募集中です。強制のない、ゆるやか~な会ですので今年もどうぞよろしくお願いいたします」
講演『平成日本病の処方箋-新しい時代への序章-』
中川晋一先生は滋賀医科大学を卒業後、勤務医を経て、インターネットが日本に導入されたばかりの1990年から、インターネットを使った健康管理をテーマに京都大学で研究され医学博士号を取得、さらにコンテンツ研究を極めたいと40代で東京工業大学で学術博士号を取得されました。ITに通じた産業医として、IT企業の社員の健康状態ばかりでなく、その業務内容や習熟度まで掌握して、従業員の安全・安心のため、企業に提言や勧告をしておられます。また、常勤の所属先を見つけることが難しい学位取得者・研究者等のために、一般社団法人情報通信医学研究所を設立され、現在、代表理事・所長を務めておられます。
「平成日本病」とは、何か難しい社会の病いだろうか、と思っていましたが、まず産業医の役割についてのお話から始まりました。
従業員の安全・安心な労働環境の管理と整備
産業医は会社の発する業務命令が社員の健康を害する恐れがあるとき、業務命令の制限を勧告することができ、業務を遂行すると健康を害する可能性のある場合、出勤禁止を勧告することもできるそうです。具体的には、職場内の安全な作業環境保全のため、月1回全館巡視をしたり、復職者と面談をしたり、前月80時間以上の残業をした従業員全員と面談して健康支援をしたりするのだそうです。こうした面談で睡眠障害や高血圧などがわかると、中川先生はIT企業の業務内容もわかるので、「プロジェクト自体に無理がある」といったことまで会社に提言し、残業時間の制限や仕事を減らすことを勧告するとのことです。
こうして、産業医として勤務した企業では、5~6年でメンタルの問題による休職者を2.5%から0.8%に減らすことに成功しました。
実践的ダイエットの提案
中川先生は産業医のかたわら、クリニックなどで内科医として診察もされ、身体の健康状態を守るには体重コントロールと睡眠時間の確保の2点が最重要との考えです。ご自身が大学生の頃は身長183センチ、体重86~88キロほどだったのに、研修医から大学院時代の不摂生のため113キロになってしまったそうです。当時は、当直医のアルバイトと研究のため徹夜続きとなり、睡眠リズム障害によるストレスを食べることで解消していたとのこと、例えば当直に入る際にはコンビニ弁当にポテトチップ1袋、オレオ1袋、お茶2リットルを平らげていたそうです。その後、野菜・海藻・魚しか食べない無理なダイエットにより90キロ台まで落としたそうですが、「絶対に皆さんはやらないでください」ということです。
90キロ台を保ってはいたものの、健康診断の直前だけ節制して普段は大いに飲み食べる、という生活を続け、40歳過ぎての博士課程での研究のストレスから過食となり、ついに45歳で糖尿病という診断を受けてしまいました。1日の摂取カロリーを1600 kcalに抑えるよう指導を受け、ごはんを1食150グラムきっちり測って食べるようにしたところ、94キロから74キロへと減量に成功! ところが今度は体力が落ちて風邪をひきやすくなってしまったのだそうです。
高血圧、高脂血症などの人も体重を5キロ減らせば薬がいらなくなり、体重コントロールができるだけで医療費が削減できる――これが「平成日本病」への1つ目の処方箋でした。
睡眠時間確保法の提案
2つ目の処方箋は睡眠時間の確保です。日々仕事に追われる緊張を解くことができるのは、睡眠だけ。睡眠時間が短いと交感神経の緊張が解けず、時差ボケのような状態になってしまうそうです。睡眠時間3~4時間が続くのはうつ病の原因にもなります。「技術者のなかには本人が好きで仕事に打ち込んでしまう人もいて、残業させるなと言われても上司としてどのように声をかければよいのか」という質問に対し、中川先生から対照的な2人のご友人のエピソードが紹介されました。
1人はたいへん優秀なプログラマーで、24時間ほとんど寝ずにプログラムを書き続けて38歳で亡くなってしまいました。もう1人は世界トップレベルの自然言語処理・機械翻訳の研究者で、毎日規則正しく朝8時半~9時に出社し、11時半までパソコンの前で研究、11時半から昼食をとり13時までが自由時間、13時~16時半まで一気に研究、そして16時半に帰宅するのだそうです。あまりの時間の短さに「家に仕事を持ち帰っているの?」と中川先生が聞くと、「自宅では仕事はしません。子どもと遊びます」との答えが返ってきました。集中力が続くのは3~4時間が限度、睡眠を十分にとって午前・午後各3~4時間に全力で仕事に取り組むのが最も効率が良い、と先生は気づいたそうです。ルールを決め、ルールを徹底するのが大事。「締切りがある、納期に間に合わないから残業するしかない」との声が上がりますが、ルールどおりにやって納期に間に合わないなら、それは受けるべき仕事ではないのでは? というお話でした。
なぜ残業時間が延びるのか?
残業が増えてしまう原因として、以下の4点を挙げ、具体的なケースを交えてお話がありました。
- 本人の能力が十分でない場合。残業を命じては本人を追い込むだけ、救いの手を差しのべるか、別の人にやってもらうようにする。
- 本人の能力は十分あるが、上長から命じられる業務量が多すぎる。上長に問題があり、部下を「便利づかい」してしまう。
- 本人の能力は十分、上長の指示にも問題はないが、現場がトラブル続き。
- 本人の能力は十分だが、職場環境が悪く、作業効率が著しく悪い場合。
最後にアメリカの西海岸、サンノゼの最先端のIT技術の開発現場が紹介されました。中川先生のご友人が経営するIT企業では、広いレストランを借り切り技術者を集めてピザパーティを催し、「今日はこれを作ってほしい」と発表して3時間で各自がプログラムづくりに一斉に取り組み、3時間後に回収したプログラムをレビュアーがその場で動作確認をして「本日の最優秀プログラム」が発表されます。このような毎日がハッキングパーティの開発現場と、たくさんのハンコが押された書類を回している日本の開発現場、どちらが楽しいか? という問いかけで講演は終了しました。
「キャリア研究会」のテーマソング発表
立食パーティは大学生参加者、谷口スバルさんの乾杯で始まり、初参加の方や久しぶりの参加者からの自己紹介と近況報告がありました。パーティにも参加してくださった中川先生に、質問をして自分の課題に引きつけて話し合っている人がいたり、自己紹介をした初参加者に早速いろいろ聞きにくる人がいたり、楽しく有意義な会話の輪が広がりました。
締めは、林利枝子さんが奄美大島研修で買い求めた大島紬の素敵な着物姿で務めてくださいました。 12年目を迎えたキャリア研究会はさらにパワーアップし、女性のためのネットワークづくりの場を提供してまいります。ご友人や同僚の方たちとお誘いあわせの上、ぜひ気軽にご参加ください!
※講師の方の所属及び役職は、開催当時のものです。(敬称略)
今後の開催予定は、こちらから