キャリア研究会:女性のためのネットワーク作り

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活動履歴

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開催報告

開催日 2018年5月28日(月)19:00~21:00(開場18:30)
場 所ミューザ川崎 研修室1
会 費2,500円(軽食費込)
テーマ 「日本の生産性」をみんなで考えてみよう!
講 師 古川 玲子
ユニアデックス株式会社 監査役
参加者 26名

 

セミナーの模様

5月28日の講師は、ユニアデックス株式会社 監査役の古川玲子さん。
古川さんは日本ユニシスに入社後、子育てをしながらシステムエンジニアとしてご活躍され、2017年にユニアデックスの監査役に就任されました。
仕事と子育て両立のご経験から、市民団体「男も女も育児時間を!連絡会」でご活躍の他、「男は忙しいから家事できない?? 男性の家事・育児を考える」等の調査研究やシンポジウムを開催。
また、2013年より東京大学公共政策大学院でワークライフバランス等のテーマ授業を支援していらっしゃいます。
普段からワークライフバランスや生産性向上に注目されているという古川さんに、“「日本の生産性」をみんなで考えてみよう!”と題し、お話いただきました。

生産性向上は国家的課題

昨今、国家的課題にもなっている「生産性向上」。
国会でも働き方法案が可決されようとしていますが、その議論は「生産性向上=残業時間削減」が主流になっています。
国がなぜ「生産性向上」を課題としているのでしょう。
そもそも「生産性」とは何か、日本の生産性は本当に低いのかなど、国際比較データを基に「日本の生産性」についてお伺いしました。

「生産性」の定義

生産性は「アウトプット÷インプット」で算出されますので、アウトプットが増えるか、インプットが減れば生産性は向上します。
今回のセミナーでは生産性の中でも「国民経済生産性」についてお話いただきました。これは「GDP÷就業者総数」で算出された値を指します。なお、国際規格では就業者総数ではなく、「GDP÷人口」で算出された値を用いる場合があるようですので、こちらのデータも交えてご紹介いただきました。

さて、日本の生産性は、世界と比較した場合どのような位置づけになっているのでしょう?

日本の生産性の現状

2015年、日本のGDPは世界で3位でした。そして人口は11位、先進国の中では2位と小さな島国でも日本は、人口大国であることがわかります。
しかし、1990年代に日本は人口オーナス期に突入。主要国比較では世界最速で少子高齢化、人口オーナス化が進んでおり、働き手の減少、社会全体の扶養負担の拡大により、社会保障制度の維持が困難な状況になっています。

日本の生産性を見てみると、先進国18カ国中17位、開発途上国を含めると28カ国中27位と極めて低いことがわかります。労働時間が把握され、時間調整した15カ国の中においては最下位です。
では、これが日本の本当の実力なのでしょうか?日本は潜在能力を活かせていないのではないでしょうか?

高学歴でITリテラシーがある人を「高スキル」とした場合、日本は、高スキル労働者の構成比率がトップです。それなのに生産性は低く、下位のアメリカや韓国の方が生産性は高いそうです。
業種別に一人当たりの総生産額を見ても、日本は15カ国中、製造業11位、農業12位、サービス業は14位となっているようです。特に、昨年発表された談話の中で安倍総理は、ホワイトカラーの生産性の低さを懸念しているようで、これが今後の課題といえそうです。


「日本の生産性」の経年変化

次に、昭和の時代からの経年変化をグラフで紹介いただきました。
購買力調整後のデータを用いた「各国の一人当たりの生産性」のグラフを見ると、日本の一人当たりの生産性は微増はしていますが、他国に比べ生産性が向上できていないということがわかりました。
ホワイトカラーの労働時間が長いといわれるアメリカは一人当たりの生産性がトップ、プライベートを重んじるイギリス、フランスでさえ、日本よりも生産性は高いということが事実として数字に表れていました。

どうすればよいのか?のヒント

では、日本はどうすればよいのでしょうか?そのヒントをお話いただきました。
まず大きな要因として、女性労動者の生産性が低すぎることが挙げられました。
その理由として考えられることは、男女の賃金格差、家事労働の偏り、そして管理職など、高付加価値業務へ女性をアサインしない日本の風土とのこと。
男性の賃金100円に対する女性の賃金は、イギリスが78.2円なのに対し、日本は52.9円と、まだまだ男女の賃金格差が解消できていないことがわかります。
また、家事労働が女性に偏っているため、女性はパート就労にならざるを得ず、これが低賃金化の要因となっているようです。
またフルタイムワーカーの場合、家事や育児の時間をあわせた日本女性の総労働時間は圧倒的に多く、過重労働状態であるとのこと。
女性を管理職などにアサインしない風土という点については、ここ数年、様々なところで問題視されています。

古川さんは「女性が日本の一番の含み資産である」といいます。
パートタイマーで働く女性が能力に応じた仕事に就けるようになり、フルタイムワーカーの女性を男性と同様、より付加価値の高い業務にアサインできるようになれば、女性の生産性が向上するのではないかということでした。
職場にいるワーキングマザーがダイバーシティ源となり、周りの時間意識が向上し、生産性の向上につながったという結果も出ているようです。

それから、もう一つは投資金額に占めるICT投資比率が低いこと。
増額したICT予算の用途を見ると、日本は業務効率化やコスト削減、法規制対応など、守りのIT投資であり、新しいものを生み出さない投資であるケースが多いようです。


変化への対応が難しい社会

日本人は、標準化やプロセス化、スクラップ&ビルドが苦手であること、そして社員を守る傾向にあり、業務効率が高くても外注をせず、低効率でも社員で対応、またパートタイマーはスキルアップ施策の対象外であることが多く、これらが結果的に生産性向上の妨げになっているのではないかと古川さん。
こう考えると、日本はまだまだ作業効率が悪く、生産性向上のために改善していかなければいけないことが山積しているようです。

今回のセミナーにおいて、日本の生産性を向上させるための答えはありませんでしたが、働き方改革や女性の活躍など、国家政策としても掲げられていることを改めて考える良い機会となったのではないでしょうか。
「日本の」「国の」となるとスケールが大きく、普段あまり深く考えることがない内容ですが、自分たちの働き方や変化への対応を考え、ひとつずつ実行していけば、これが日本の生産性向上につながるのではないかと思うセミナーでした。

 

今回のセミナーには新たに5名の方が参加され、ほぼ満席。「生産性向上」への関心の高さが伺われました。
セミナー後の懇親会も半数以上の方が参加し、遅くまでその議論は続いた模様です。

キャリア研究会では、今後もいろいろなセミナーやイベントを企画しております。 ご興味、ご都合に合わせ、是非ご参加ください。


受講者の声

   
  • 今回のように“生産性”を考えたことはなかった為、古川さんのご説明で良く理解が出来た。
    日本はまだまだ見直す必要、余地があると思いました。
    良いものをせっかく持っている日本、各々が意識する環境になればと感じた。
  • 生産性についてわかりやすいデータでよくわかりました。生産性向上の為、意識改革が大事で、どう意識をもっていくか、考える機会になりました。
  • デービットアトキンソン氏の著書はとても面白く読んでいたが、古川さんならではの切り口も加わっていてユニークネスがあった。
  • 日本人は、生産性が低いという現実がもっとひんぱんに報道されるべきだと思いました。国民全体で考えていくべき問題だと思いました。
    こんなに順位が低いとわかったら、プライドにかけて解消する方向にカジをきれるのではないか・・・。
  • (アンケートより抜粋)

    ※講師の方の所属及び役職は、開催当時のものです。(敬称略)

     

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