キャリア研究会:女性のためのネットワーク作り

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自らを少しでも高めたい、仕事と家庭を両立したい、そんな女性たちにネットワーク作りの場を。キャリア研究会

活動履歴

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開催報告

開催日 2015年07月10日(金)開場18:30 開始:19:00~21:00
場 所ダイヤモンド社 9階会議室
会 費\2,000(軽食費込)
テーマ 思い通りの人生を生きる~ユニバーサルデザインを通して~
講 師 株式会社ユーディット会長兼シニアフェロー
同志社大学政策学部・大学院総合政策科学研究科
ソーシャルイノベーションコース教授
関根千佳
参加者 20名

 

セミナーの模様

7月10日のキャリア研究会は、「思い通りの人生を生きる~ユニバーサルデザインを通して~」と題し、株式会社ユーディット会長兼シニアフェロー、同志社大学教授の関根千佳さんにお話いただきました。

ピンチをチャンスに変える様々な出会い

関根千佳さんは、日本におけるユニバーサルデザインの第一人者。
日本IBMを経て1998年に起業。障がい者やワーキングマザー、親の介護で離職した人などを含め、全員がテレワークというスタイルで会社を運営されています。
2012年、同志社大学勤務と同時に会長に就任。同志社大学をはじめ、これまで数々の大学でも講義をされ、ユニバーサルデザインの観点から、社会や人生を少しでも良くしていくための社会変革を進めていらっしゃいます。

明るい声とリズムを感じる話し方で参加者を一気に引き込んだ関根さんは、意外にも若い頃は引っ込み思案でおとなしかったのだとか。
講演タイトルにもある「思い通りの人生を生きる」。
お話を伺うまでは、きっと成功への道のりをまっすぐに歩かれてきた方なのだろうと思っていましたが、実は幼いころの病気や大学浪人、就活での男女差別、入社後の研修やアメリカと日本のギャップなど、ご苦労もあったようです。
そんな関根さんの人生の中には、ピンチをチャンスに変える様々な出会いがあったようです。

外資系企業との出会い

まだ雇用機会均等法が施行される前、就活でいくつも企業を訪れる中、「最低5年は辞めないで」と言われた唯一の会社が、日本IBMだったそうです。また、「女性や障がいのある人が働きやすそう!」と思ったことが入社のきっかけになったといいます。
入社してみると、既に女性の部課長も存在し、ワーク・ライフ・バランスに取り組まれていたことなど、昨今日本でやっと当たり前になりつつあることが、当時のIBMには存在していたということです。
入社すると1年半の研修。文系でITに疎かった関根さんはとても苦労されたのだとか。
優秀な同期の中で一人出遅れたと感じた関根さんは、数年間「自分は給料泥棒のようだ」と悩まれたそうです。
「向いていない、もう辞めよう、わからない」そんな苦悩が続いたある日、客先の社長も専務も若い女子社員もITがわかっていないことに気付きます。ならば、わからないお客様の側に立てばいいのだと、企業トップ向けのシステム開発を担当されます。
その中で見えてきたことは、理系でITのわかる人というのは「わからない人が、なぜわからないかが、わからない」ということ。そしてそれを伝える仲介者としてご活躍されました。

アメリカでの出会い

87年に結婚、ご主人のアメリカ赴任に伴いIBMを休職し、渡米。
当時、英語がままならなかった関根さんでしたが、毎日新しいことへの挑戦は楽しかったそうです。そして、ここでも様々な出会いがありました。
ご主人の上司が20代の女性部長だったこと、街にいるたくさんの車いすユーザー、老人ホームで起業している人、障がいを持つ学生・教師が多く在籍する大学、全盲の学生が図書館で情報検索をしている光景…。日本との違いは、どれも新鮮に映ったようです。
2年間の渡米で得た多様な人たちとの出会いが、その後の関根さんの人生に大きな影響を与えることとなります。

しかし帰国後、日本の現実を目の当たりにした関根さん。
これからどう生きるか悩み、この頃が人生で一番つらかったと振り返る関根さんはこの時、ある医師に「あなたが渡米したこと、そして戻ってきたことには意味があるのでは?」と問われ、気が付いたそうです。
「そうだ、ITを使えない人のために仕事をしよう」と。
そしてIBMのトップに直訴し、1993年アジア発の支援技術センターを開設しました。
その役目は加齢や障害のためITを使いにくい人たちを使えるようにすること。ただし、社会貢献として無料配布するのではなく、製品として少しでもお金を支払って頂くことも提案されました。これは、お金を支払うことでお客様が要望や不具合などを寄せやすくなり、さらなる製品の向上につながるという考えがあってのことでした。

ユニバーサルデザインとの出会い

1996年、当時三洋電気の柳田宏治氏と出会い、バリアフリーとユニバーサルデザインの違いについて徹底討論。
そして、自身も車いすで生活するノースキャロライナ州立大学教授のロナルド・メイスの、できるだけ多くの人が利用可能であるように製品、建物、空間、情報、サービスをデザインする「ユニバーサルデザイン」の考え方に共感。
これを日本で広めたいと考え、1998年IBMを卒業(退社)されました。

そして情報のユニバーサルデザインを研究、提案、助言をする、株式会社ユーディットを設立。
社員は5名、登録スタッフ280名が全員テレワークというスタイルです。
スタッフは障がい者や高齢者、子育て中の女性など、年齢も幅広く、ITで変わるワーク・ライフ・バランスを実現されています。
ユニバーサルデザインとは、年齢、性別、能力、体格などにかかわらず、より多くの人ができるだけ使えるように最初から考慮して、まち、もの、情報などを作るという考え方とそれを作り出すプロセスのことをいいます。
ユーディットの強みは、年齢、性別、能力、体格、環境が異なる幅広いスタッフがいることのようです。

バリアフリーは、これまで負担が大きいとネガティブに捉えられがちだったのですが、ユニバーサルデザインは、若い人などより幅広い人を含むため、今では多くの自治体や企業も取り入れ、推進しています。
最初から多様性を考慮することで、まちの活性化、企業のブランド力や利益率の向上につながり、低コストで美しいデザインが実現されています。 高齢者や障がい者だけでなく、全ての人が対象となるため、満足度も向上します。

アメリカでは政府のWebサイトや、連邦政府が新たに購入する情報機器やソフトウェアなどは、高齢者や障害者に使えるものしか買ってはならず、違反した場合は提訴されるという「リハビリテーション法508条」があります。
WHOの資料によると、1950年から2050年までの100年間で世界の子どもとシニア世代の人口は逆転、2005年に日本はイタリアを抜いて世界一の高齢国家になり、産業構造・社会基盤・意識に大きな変化が求められています。
関根さんが提唱してきたことが日本でもっと取り入れられ、高齢者や障がい者の社会進出が拡がるのではないでしょうか。

あなた自身が会社・社会を変える

講演の後半では、関根さん自身のご経験から、仕事や人生についての様々なアドバイスをいただきました。
仕事とは、社会の課題を発見し、解決策を考えること。そして、「課題のある点を指摘」「どうすればもっと良くなるか提案」「いい点を褒める」、この3点セットで社会を変えるのが重要であると関根さん。
常に2ランク上の人ならどう思うかを考えて行動することも大切だと言います。

シゴトは「志事」、はたらくとは「傍を楽にする」こと。
「仕事を、人生を楽しもう。寒い冬があってこそ、春がうれしい」。
死んでしまいたいほど辛かった時期が、自分の人生の中で一番成長したときだったと振り返っていました。
「時間管理は最大の武器、食事や育児・介護で忙しいからこそテキパキと動き、ITを味方につけ、もっと活用しましょう。そして社外の友人は精神安定剤です。」との言葉に、参加者たちも一様に頷く姿が印象的でした。

女性だから可能性が広がる

何事も最初が大変なのは当たり前。
人生に無駄な時間はなく、どこかできっと役に立つということを肝に据えれば、可能性はどんどん広がると関根さんは言います。
「営業職は一度経験しておくと有利。そしていつかは起業も視野にいれてみては?」などのアドバイスがありました。
そして、キャリアを積む上での心構えもいくつかお話くださいました。

「山登りでも先頭は大変で、藪こきもあればクレバスを踏む危険性もある。でも、フロンティアだからこそ見える景色もある」。
様々な壁や困難が立ちはだかろうとも、悩み、もがきながら、都度いろんな出会いをきっかけに、フロンティアとして歩んできた関根さん。
関根さんが次に目にする景色は一体どんなものなのでしょうか。

懇親会の様子

セミナー参加者からは「本当に感動した」という言葉が次々と飛び出しました。
関根さんには恒例の懇親会にもご参加いただき、この後もいろいろな意見交換が行われました。

キャリア研究会は、今後も様々なセミナーやイベントを企画し、情報交換の場をご提供してまいります。
ご友人、同僚の方とお誘いあわせの上、どうぞご参加ください。


受講者の声

   
  • 様々な困難にポジティブな発想で乗り越えてきた関根先生の講演に非常に元気をいただきました。ユニバーサルデザインについて勉強したいと思います。世の中の見方が変わりそうです。
  • ピンチをチャンスに変えているという感じを受けました。すごい!! 本当に感動しました。自分の考えがネガティブになっていたので、心にしみこんで参りました!ありがとうございました。
  • ユニバーサルデザインについて、これからしっかり学んでいくきっかけになりました。今後仕事でも様々な課題にとりくんでいくときに、ユニバーサルデザインを積極的にとりいれていく方向づけができたらと思っています。障がい者の雇用についても目からうろこでした。

(アンケートより抜粋)

※講師の方の所属及び役職は、開催当時のものです。(敬称略)

 

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